「産業保健職の現場課題に応える」Q&A
「産業保健職の現場課題に応える」Q&A
当学会では、産業保健職が現場で直面するさまざまな法的課題についての研究・討議を進めているところですが、本年2月に「産業保健職に関する検討会」を発足させ、産業保健看護職、産業医、法律家を含めた多職種で、具体的な現場課題の洗い出しと検討等に取り組んで参りました。今般、その成果をQ&Aの形でホームページ上に公表することといたしました。
学会員の現場での課題解決に少しでも役立てばと願っております。
作成:
産業保健職に関する検討会
小島健一 齋藤明子 鈴木雅子 田原裕之 中谷淳子 錦戸典子 西脇巧 長谷川佳代子 林幹浩 福島南 福谷淳子 松原良次 丸山慧師 水谷明男 矢内美雪 淀川亮
監修:
近畿大学法学部教授 三柴丈典
- Q1
適応障害やうつ病等の精神疾患のために休職している従業員が、休職期間中に趣味の活動(音楽活動や旅行等)をしていた場合、療養専念義務に違反し、会社から注意指導や懲戒処分の対象となり得るでしょうか。
- Q2
定年を迎えて再雇用を検討している従業員がおります。これまでに双極性障害で3回ほど休復職を繰り返し、定常化されていないテレワークでの復職を要求するなど、契約上求められる労務提供は殆どできておりません。弊社では、高年齢者雇用安定法もあり、定年後の従業員はほぼ100%嘱託社員などとして再雇用しており、当該従業員もその家族も当然再雇用されるものと考えています。退職勧奨も検討していますが、これまでの経緯からは応じるとは思えません。弊社としては現状の働き方では任せられる業務もないため、障害者雇用であれば再雇用もありうると考えますが、当然給与等の条件が下がるため不利益変更とならないか心配です。再雇用すべきか、すべき場合の留意点を教えてください。
- Q3
保健師(→日本産業衛生学会産業保健看護部会の定義上は「産業保健看護職」)が、社員とのメンタル相談の際に、「人事総務や産業医には言わないでください、保健師さんだけにお話します」と言われ相談を受けました。
これはその通りにしてよいでしょうか?それとも、「産業医には伝えざるを得ない」と言うべきでしょうか?それとも、内容によって保健師がそのことを判断する必要があるでしょうか。
仮に、保健師だけが知っている相談内容がある場合に、どういった法的問題が生じうるでしょうか。
- Q4
企業の人事部門に所属する産業保健職です。医療専門職として適切と考える対応と企業側の意向との間にコンフリクトが生じやすい状況(例:精神障害やがん等で療養した従業員の復職)において、企業内の指揮命令系統に従うことと専門職としての独立性・中立性の確保をどう両立させればよいのでしょうか。
- Q5
企業内で人事部門ではない部門に所属する常勤の産業保健職です。健康問題を抱えた従業員個人への対応を行う際、人事部門とは適宜に健康情報を共有することがある一方で、ほんらい健康管理での連携が必要なその従業員の所属部門の上司とは健康情報を共有できる体制になっていないために、当該上司に具体的な助言を提供し、直接に情報収集して連携することに躊躇してしまいます。また、産業医は月1回来社するだけの非常勤であるため、こまめな情報共有や相談は難しい状況です。このような場合、従業員の所属部門の上司と適切に連携するためにはどうすればよいでしょうか。
- Q6
従業員の健康管理をするにあたり、産業保健職は様々な記録をとっていますが、法的留意点はありますか?