Q19:接種に伴う事故・健康被害に対する賠償責任の所在について

【質問例】

・勤務中の接種に伴う健康障害なら労災になるのか

→使用者からの指示に基づかない限り業務ではないため、労災にはならないだろう。ただし、接種時間を労働時間としている場合、(広義には使用者の指揮命令下にあると解されるため、)本来ならば、労災扱いとなる可能性もあるが、このような事情を踏まえ、労働行政も労災扱いとはしない方針のようだ。

 

・家族への接種に伴う健康障害等の責任は負うべきか

→職員の場合と同様であり、理論上、接種担当者や主宰者が負う可能性はあるが、接種の業務マニュアルや定型書式に沿って接種する限り、殆ど負う可能性はない。

 

・職域接種を行って被害が生じた場合、特にアナフィラキシーが生じた場合、重篤な障害が生じた場合、主宰する企業と実務医療職のいずれが責任を負うか、責任範囲はどうか。職域接種を行う場合の会社の安全配慮義務の内容は何か。

→上述の通り、健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、地方自治体により、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられる。接種担当者が接種業務で通常の注意を欠いて(業務マニュアル等から逸脱するなどして)健康障害を生じたという例外的な場合、それが会社が行う業務の一環である場合、概ね会社が責任を負う(民法第715条)。会社は、接種担当者に肩代わりした責任の償いを求められるが、会社と接種担当者が雇用関係にあるような場合、実際には難しい。

 

【回答例】

上記の通り。

 

<執筆者>

三柴 丈典(近畿大学法学部教授)