第 1 回学術大会に参加して
日本製鉄室蘭製鉄所 産業医 佐藤利夫
産業医の仕事をしていると、「何科の先生ですか?」という質問に出くわすことがある。ちょっと当惑する「お尋ね」だ。というのは、私は臨床系の医師ではないからである。もともとは解剖学の教員で、その後に医学教育の分野へ転じ、さらに産業医専業に転じて現在に至っている。
大学院 1 年目から医学教育に転じる前年まで、15 年間にわたり肉眼解剖実習すなわち正常解剖に従事していた。正常解剖の法的基盤は死体解剖保存法であり、教材となる解剖体の収集手段である篤志献体は献体法(医学及び歯学の教育のための献体に関する法律)によって規制されている。正常解剖の業務に従事していた 15 年間、これらの法令を深く読み込み、思索し、議論し、そして管見を学会誌に著していたことを思い出す。そんなこともあって、業務を規制する法令に接することには馴染みがあった。日本産業保健法学会が設立されて第 1 回学術集会が開催されると聞き、興味と関心をもって参加した動機の一つである。
2 日間にわたる学術集会に Web で参加した。いずれのプログラムも、産業保健の実務と密接な関係をもった興味深い発表内容で、日々の業務で直面する課題へ法的な裏付けを与えるものだったと思う。次年度の学術集会が楽しみである。