PICK UP NEW RULES Vol.3

 

№3  2022/08/22
編著:日本産業保健法学会 広報委員会

今回取り上げる法改正 ・ ガイドラインの内容
「家内労働法」


家内労働者
とは、自宅などを作業場として 、製造 ・ 加工業者、問屋などの業者から委託を受け、原材料などの提供を受けて、一人もしくは同居の家族とともに、物品の製造や加工などを行い、その労働の対価として工賃を受け取っている人のことを指します。1958 年頃に東京 ・ 大阪で、ベンゼンを溶剤とするゴムのりを使用してヘップサンダルの接着作業をしていた家内労働者らに、多数のベンゼン中毒による骨髄障害が発生しました
ヘップサンダル事件)。この事件を契機に、家内労働者を保護するために、工賃の最低額、 安全および衛生などを定めた 「 家内労働法 」 が 1970 年に施行されました。
メーカーや問屋などから部品や原材料の提供を受けて、個人で、または同居の家族と物品の製造や加工を行う「 家内労働 」は、減少傾向にあるものの( R 3 年:約 97 000人)、いまなお製造業を下支えする重要な役割を担っています。昨今 、プラットフォームワーク、ギグワーク、クラウドワーク、フリーランス、副業 ・ 兼業などの 働き方の多様化が広まってきています。自営型テレワーク(注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う就労)については、「 自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン 」が示されているものの、法制化には至っていません (参考 1 )。「家内労働法」は、 新しい法律ではないものの 、多様な働き方に対するあるべき法的保護を今後検討するのに役立つことから、このシリーズで取り上げることにしました。

 

Pick Up Point 1“労働者性

家内労働者が、“労働者”のかどうか は安全衛生上とても重要です。元来、家内工業は、使用者側が労働基準法や負傷疾病の責任を負わずに低賃金で業務を委託できるものであり、契約関係上も家内労働者は弱い立場であるために、安全衛生などが蔑ろにされやすい状況 と言えます。労基法や労安衛法、労災保険法などの個別的労働関係法の適用対象である「労働者」に該当するか否かは、実態として使用者の指揮命令の下で労働し、かつ、「賃金」を支払われていると認められるか否か(使用従属性)により決まります。この判断は、①仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無、②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無、③勤務場所・時間についての指定・管理の有無、④労務提供の代替可能性の有無、 ⑤報酬の労働対償性、⑥事業者性の有無(機械や器具の所有や負担関係や報酬の額など)、⑦専属性の程度などを総合的に考慮して行われます(参考2)。 家内工業は、 委託者との間の物品の製造加工契約は、民法上は請負契約であり、家内労働者は、作業の遂行にあたり、時間的 ・ 場所的拘束がなく、使用者の指揮監督を受けないため、「使用従属性」がなく労基法上の労働者にはあたらないとされています。

 

Pick Up Point 2“委託者側の安全衛生上の責務”

家内工業は、法制化の契機が「ヘップサンダル事件」であったことからも安全衛生は重要な点であり、災害を防止するために必要な措置について違反すると処罰の対象となります(罰則規定あり)。家内工業において、委託者側の責務としては、家内労働手帳を家内労働者に交付すること(義務)、家内労働者が長時間労働に従事しないようにすること(努力義務)、機械器具や原材料を譲渡、 貸与する場合の、危害防止措置(義務)などが定められています。

多様な働き方の労働者における安全衛生等に関する事項を下表の通り整理しました。このような労働者の安全衛生がどのように法的に保護にされていくのかを、注視していく必要があると思います(参考3より改変)。

労働政策類型 正社員 パートタイマー 契約社員 派遣労働者 業務請負会社社員 専属請負自営(家内工業含)
労働(契約)
条件の明示
労基法(雇い入れ時明示、就業規則等の常時提示など) 労基法
パートタイム労働法
労基法 労基法
労働者派遣法
労基法(請負会社に責任) 「下請法」による書面公布義務
「家内労働法」の家内労働の場合は、家内労働手帳交付
解雇予告
解雇制限
労基法(解雇には合理的理由が必要等、解雇予告 30 日、一定の解雇禁止) 労基法
有期契約の場合の雇い止め
同左 同左 同左 「下請法」の違反告知の報復禁止
「家内労働法」の家内労働の場合は、打ち切り予告
労働(就業)
時間規制
労基法(原則週40 時間、1日8時間労働制)変形時間、みなし労働時間制、フレックスタイム、裁量労働制、管理職等の適用除外など、超過労働の割増賃金 同左 同左 同左 同左 「家内労働法」の家内労働の場合は、就業時間過長に係る配慮努力義務。
安全衛生対策 労働安全衛生法など 同左 同左 同左
労働者派遣法
同左(建設業、造船業は元請責任が明記) 「家内労働法」の家内労働の場合は、安全衛生措置義務。
医療保障 組合健保ないし協会けんぽ 同左
適用対象外は国保
同左 同左 同左 国民健康保険(国保)
労災補償 労災保険制度 同左 同左 同左(派遣元が保険料支払い) 同左(請負会社が保険料支払い) 一部の危険有害作業に従事する家内労働者には特別加入制度

 

参考資料:
1. 濱口桂一郎 . 雇用類似の働き方に関する現状と課題 日本政策金融公庫論集 第 47 号(2020年5月)
2.労働政策研究・研究機構 . 労働者の定義
3.労働政策研究・研修機構 . 労働政策レポート No.5 多様な働き方とその政策課題について 第4章

 

産業保健法学会広報委員会