事業報告

日本産業保健法学会
第1期事業報告書

(2020年11月1日から2021年10月31日まで)

本学会は

  • 産業保健を、法的側面からも推進すること
  • 産業保健にかかる法的問題をリファーできる専門家を増やすこと
  • 産業保健実務者に法を踏まえた問題解決能力を高めて頂くこと、高めるための手法を探究すること
  • 法を予防的に活用する流れを作ること
  • 安衛法上の積み残し課題の解決を図ること

を主な目的として、2020年11月1日に発足した。

発足以前から活発な活動を展開し、約1年が経過した2021年10月15日時点で、会員数727名、第1回大会参加登録者803名に達している。

1)第1回学術大会

学会自体のコンセプトを反映した統一テーマ(「法知識を踏まえた問題解決を考える」)のもと、
厚生労働省ほか10団体(産業医学振興財団、全国社会保険労務士会連合会、全国労働基準関係団体連合会、中央労働災害防止協会、東京都医師会、日本医師会、日本産業衛生学会、日本産業カウンセラー協会、日本精神保健福祉士協会、労働者健康安全機構)の後援、
一般財団法人日本予防医学協会の協賛、
3学会(日本産業精神保健学会、日本産業ストレス学会、日本職業・災害医学会)との連携をもって、
講演は、
招待講演1、大会長講演1、特別講演3、教育講演2、
シンポジウムは、
緊急企画1(協賛付)、シンポジウム3、大会企画シンポ1、模擬裁判1(協賛付)、関係学問の最前線3(精神医学、労働法・比較法学、産業保健学)、連携学会との共同シンポ3(日本産業精神保健学会、日本産業ストレス学会、日本職業・災害医学会)、
その他、ワークショップ4、事例検討1、一般演題7、協賛セミナー2、
との内容で開催された。

2)新型コロナ労務問題Q&Aサイトの開設と更新

当学会では、公益的な観点から、産業現場で問題となっている諸課題に積極的に対応すべく、新型コロナウイルス感染症に係る労務問題について、いち早く弁護士を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、Q&A形式の解説をWEBサイトに公開した。アクセス件数は16万件以上に達している。

公開日:2020年5月5日(学会発足の半年前)
公開数:計11題を状況に合わせ随時更新してきた。2021年8月に三柴の文責でワクチン接種に関する7題を追加し、随時更新してきた。
アクセス数:16万件以上(2020年10月15日現在)

なお、本学会は、立道昌幸理事が研究代表を務める厚生労働省の令和3年度労災疾病臨床研究事業費補助金による、職域での新興感染症対策ガイドラインの策定等を目的とした研究事業のうち、法制度の調査研究を賛助しており、吉田肇理事が当該研究をリードしている。その研究成果の一部は、このサイトでも公表される予定である。

3)関係学会との連携と大会での連携シンポの開催

これまでに、日本産業精神保健学会、日本産業ストレス学会、日本職業・災害医学会と連携し、日本産業精神保健学会では、第27回大会で連携シンポジウムが開催され、第28回大会でも開催予定であり、日本産業ストレス学会では、第28回大会でオンラインによる連携シンポジウムを開催予定だったが、発信用の動画データの消失(当学会側のミスによる)により叶わなかった。日本職業・災害医学会では、第69回大会で連携シンポジウムが開催予定である。

また、日本産業衛生学会でも、第95回大会で連携シンポジウム(模擬裁判)が開催される予定である。

4)産業保健総合支援センターでの連続講座「産業保健と法」の開設と運営

産業保健関係者に向け、「産業保健と法」についての基本知識等を提供すべく、厚生労働省及び労働者健康安全機構のご協力のもと、全国の主要都市の産業保健総合支援センターでの連続講座を企画し、当学会所属の専門家による講師陣を組織し、順次研修を行ってきた。

実績:
<学会発足後~現在まで>
京都センター、宮城センター、埼玉センター、東京センター、茨城センター、北海道センター、広島センター、福岡センター、千葉センターで計40回以上実施済み。
<今後>
上記センターのほか、大阪センター、香川センター等でも実施予定。

5)研修講座の実施

当学会では、主に会員を対象として、「産業保健と法」に係る知見の共有を図るため、研修講座を企画・実施し、正規の講座の受講者には、当学会が発行する資格(メンタルヘルス/産業保健法務主任者)の単位を付与している。

実績:
2020年6月6日、新型コロナウイルス感染症に関する労務問題をテーマとするZoomセミナーを実施。参加者278名。
2021年3月6日、第1回研修講座を実施。参加者294名。
2021年3月2日、イブニングセミナーを実施。参加者約200名。
2021年7月3日、新型コロナに関する法律相談会~ワクチン接種の本格化を受けて~を実施。参加者約240名。
2021年9月25日、第2回研修講座を実施。参加者197名。

今後は、体系的なカリキュラムと事例を用いた議論形式の演習を通じて、産業保健法学に関する実践的な知識が身につくようなセミナーを予定している。

6)活動の国際展開~①英文ジャーナルの発刊準備~

学会活動の国際化を目して、英文ジャーナルの発刊準備を進めている。

Law領域のEIC(Editor-In-Chief)として、ILOやEUにも重要な貢献を果たして来たRichard Johnstone(クイーンズランド工科大学教授、元オーストラリア国立大学教授)、Law領域のeditorとして、UKの産業保健法学の権威であるDiana Kloss(ロンドン・サウス・バンク大学教授)が着任し、6月28日には学会編集委員会とのZoomでの懇談が行われた。Health領域のEICには、日本の香山不二雄氏(自治医科大学名誉教授)が着任し、administratorには、日本の三柴丈典(近畿大学教授)が着任した。

学会の英文サイトが開設され、英文原稿の投稿ガイドラインも掲載されている。

Johnstone教授からは、the Labour Law Research Network (LLRN)等の国際的なネットワークの他、同教授の知る産業保健と法に関連する領域の約70名の学者らに、このジャーナルについて告知され、投稿が呼びかけられた。Kloss教授からも、以下のようにして、UKの産業保健と法に関連する領域の多くの学者に、このジャーナルへの投稿が呼びかけられた。

ジャーナル(Journal of Occupational Health Law:JOHL)は、春号(大会特集号。2月頃発刊。12月末頃原稿締め切り)と秋号(テーマごとの特集号。8月頃発刊。6月末頃原稿締め切り)の年2回発刊予定だが、このうち2022年春号には、海外2教授が、editorialを寄稿予定であり、2022年秋号の特集テーマは、ギグ・エコノミーと労働安全衛生法となることが決定した。

既にフランスからジャーナルへの投稿があったが、アクセプトには至っていない。


ジャーナル(JOHL)には、当然ながら、邦文原稿も掲載予定であり、産業保健領域の編集責任者には堤明純氏(北里大学教授)、法学領域の編集責任者には三柴丈典(近畿大学教授)が着任した。

既に大会抄録号は発刊済みであり、現在、2022年春号(大会特集号)の発刊準備が進められている。

7)活動の国際展開~②Collegium Ramazziniでの当学会の紹介~

2020年10月末、国際交流委員会委員長の香山不二雄理事が、Collegium Ramazziniで、当学会について紹介し、相当数の聴講者の関心を得た。
同団体に対しては、今後も紹介を継続する予定。

8)日本の学術界全体への貢献活動~英文研究書出版セミナー~

2021年8月8日に、学術英語学会との共催により、英文学術書出版セミナーが開催され、国内在住の人文・社会科学系の研究者にとって困難な、海外出版社からの英文研究書出版について、木村俊介氏(明治大学大学院教授)、三柴丈典(近畿大学教授)の両名からの経験談と共に、UKの大手出版社Routledgeのシニア・エディターであるKirk Alison氏へのインタビューの記録が示された(その動画は、当学会のWEBサイトで公開されている)。

9)労働政策・労働法学・労働法実務関係要人へのインタビュー

広報委員会が、日本経済団体連合会の鈴木重也氏(労働法制本部長)、日本労働組合総連合の漆原肇氏(労働法制局局長)、鎌田耕一氏(厚生労働省労働政策審議会前会長、日本労働法学会理事、東洋大学名誉教授)、全国社会保険労務士会連合会石原正仁氏(副会長)、杜若経営法律事務所の向井蘭弁護士に産業保健と法をめぐる現状認識、当学会への期待についてインタビューを行った。

広報委員会は、その他、理事や会員の当学会への期待等について、精力的に調査し、WEBサイト等を通じて情報を発信している。

10)産業保健に関する労務・法律相談コーナーの開設・運営

当学会発足後間もなく、WEBサイト上に「JAOHL相談室」を開設し、学会所属の弁護士、産業医、精神科医らの専門家が無償で回答、対応を行っている。

公開日:2020年11月7日
相談数:現在までの約1年間で約30件(すべて回答済み)

11)マスメディア・専門誌への掲載

当学会の社会的意義が広く認められ、多くの紙誌ほかの媒体に、関連記事が掲載された。

実績の一部:
産経新聞に「新型コロナウィルス感染症に関わる労務問題Q&A」と当学会に関する記事が掲載される(2020年7月)/「労働法律旬報」誌2021年5月号「産業保健法学会の狙い」(加藤憲忠)」/「産業保健と看護」誌2021年2号「産業保健専門職と『法』 日本産業保健法学会の設立」(小島健一、錦戸典子、矢内美雪著)/「産業医学ジャーナル」誌2021年44巻2号「新型コロナウィルス感染症の労務問題」(淀川亮、三柴丈典著)/「保健指導リソースガイド」(Web媒体)「日本産業保健法学会の今後の役割について」(梶原隆芳著)/「銀行法務21」誌2021年3月号「コロナ禍での労務対応と今後の展望~現場で想定されるQ&A~」(中辻めぐみ、井上洋一、西園寺直之、淀川亮著)/「会社法務A2Z」2021年3月号「経営法談」コーナー(小島健一による学会紹介)/「労働の科学」誌2021年2月号「法の知見を基礎に産業保健の諸問題に対峙」(梶原隆芳著)/日経新聞電子版(2月7日、8日の朝刊法務面)「在宅勤務、社員の「心のケア」へ、企業動く」の記事中で当学会の新型コロナ労務Q&Aと小島健一弁護士、淀川亮メントが紹介される/「会社法務A2Z」誌2020年12月号「ポストコロナにおける人事労務分野の最新Q&A」(井上洋一著) ほか多数。

また、近く、NBL(商事法務研究会)、ビジネス・レーバー・トレンド(日本労働政策研究研修機構)も、当学会に関する記事を掲載して下さる予定。

12)総評

本学会は、2012年に発足した一般社団法人産業保健法学研究会(当時の名称は産業保健法務研究研修センター)の活動経験を基礎として、2020年11月に発足し、上記の通り、多くの活動実績を挙げることができた。

第2期目には、学会として厚生労働科学研究費補助金の申請を図る予定もあり、一般社団法人化を図り、運営の組織化、分業化を図ることにより、持続性を高めたいと考えている。